【事例エピソード】壁に思い出を遺す
「気に入った壁紙が見つからない」というご相談をいただくことがあります。
「見つからない」ということは、まだ見つかっていない理想があるということ。
一般的な選び方では見つけることが難しい、何か別の基準をお持ちなのかもしれませんね。
今回は、ショールームの壁紙選びのプロセスを事例として紹介します。
この記事が壁紙選びのお役に立てば嬉しいです。
壁紙の新しい選び方
私たちは「家」を単なる建物(house)ではなく、住む人の心を健やかにする特別な場所(home)と捉えています。
この想いは、私たち自身の体験から生まれました。
ショールームの壁紙選びの際に、思い出に焦点を当てた場所があります。
思い出に焦点を当てたことで、家は単なる建物ではなく、思い出や愛情を紡ぐ、温かさが溢れる特別な場所になりました。
では、新しい空間はどのようにして生まれたのでしょうか?
きっかけ
当時私たちは、空き家をショールームに変える工事をしていました。
溢れるモノの整理に疲れ、スケジュールに追われ、決めることが山のようにあり、本業なのに、壁紙選びに十分な時間を取ることができませんでした。
思えばこの時、「壁紙選び」より「貼り替え」に重きを置いていました。
色やデザイン、テクスチャ、パターンなどの要素をまとめることより、壁紙を新しくすることを優先していたのです。
施工後、新たに建具を設置し、同じ壁紙を貼ろうとした矢先のことです。
突然、「何だか、しっくりこない」と違和感を覚えたのです。
この時の壁紙は、グレーと白の混ざった、経年の質感が漂う塗り壁調のデザインでした。
直感的に、違和感の原因は、壁紙のデザインではないように思えました。
違和感の正体
以前と比べて、空間が寒々しく感じ、温かみが足りない気がしたのです。
違和感を具体的にしたことで、改装前の温かい雰囲気を残そうとしていることに気がついたのです。
選んだ壁紙からは、改装前の温かい雰囲気を感じることができなかったのです。
これが違和感の正体でした。
思い出に焦点を当てる
私たちの理想のイメージは、改装前の温かい雰囲気、つまり「思い出をのこすこと」だとわかりました。
一般的に、壁紙を選ぶときは、既存の床や建具、既存の家具など部屋を構成する要素に合わせ、色やデザインを決め、各メーカーのカタログ(見本帳)からイメージに近いものを選びます。
壁紙を選ぶには、「思い出」のイメージを具体的にする必要がありました。
どういうわけだか、違和感を覚えたのは、全体から見ても、広いとは言えないスペースである、このひと壁だけでした。
この壁だけは、新しい壁紙にしてもしっくりこなくて、温かみを感じられなかったのです。
思い出させてくれたのは、窓からの光でした。
キッチンは、生前の母が、とても気に入っていた場所でした。
「明るい色は、気持ちが明るくなるでしょ?」
そう言っていたことを思い出したのです。
それから、「赤は元気が出るから、大好き。」と言っていたこと、手狭になったこの家からの引っ越しを断固拒むほど日当たりが気に入っていたことなどなど、家族と母の思い出をシェアしながら、温かい雰囲気を作ってくれた母のイメージを具体的にしていきました。
最終的に、暖色系で、気持ちが明るくなるようなポップなデザインのイメージでまとまりました。
選んだ壁紙
イメージした壁紙を国内メーカーの見本帳で見つけることはできませんでした。
海外の壁紙メーカーであるオランダのEijffinger(アイフィンガー)の「YOSOY 341506」に目が止まりました(すでに廃盤)。
一般の住宅に採用するには、勇気のいるデザインだと思います。
一般的な選び方では、おそらく辿り着かなかったでしょう。
見つけた時は、「これだ!」と確信したことを今でもよく覚えています。
「明るい色は、気持ちが明るくなるでしょ?」
この言葉が蘇りました。
おわりに
この体験以降、当社では、多くのお客様に、思い出に焦点を当てた壁紙の提案を行っています。
おかげさまで、心温まる素敵な瞬間に何度も立ち会うことができました。
当社では、お客様のプライバシーに配慮し、施工事例の公開は行なっていません。
気まぐれに、このようなエピソードをご紹介し、皆様の壁紙選びの参考にしていただけましたら幸いです。
提案から工事までサポートします!
事例豊富なショールームで、見て、触って、決める
ショールームには、国内、海外の豊富な事例を展示しています。
壁紙の質感、部屋の明るさを、見て、触れて、直接確認することができます。
インテリアコーディネーターのアドバイスのほか、工事担当に直接質問できるので、こだわりのお部屋づくりをイメージしやすくなります。
ご来店は、事前予約制となります。